今年の全日本は、これまで出場機会に恵まれなかった選手のリベンジである。

多くの選手がその機会を得られない中、彼女もまた、実力がありながら全日本との縁が薄かった。

そして今年、ようやくチャンスが巡ってきた。

2013/14Vプレミアリーグの新人王・奥村麻依選手。

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実力は折り紙つき。
だが、巡り合わせが良くなかった。

そんな奥村選手は名門・誠栄高校出身。
同期は共にJTマーヴェラスで活躍した中村亜友美選手。

二人は春高やインターハイで活躍。
大学進学できる袂をわかつ。
再会は4年後。

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そんな奥村選手が高校卒業後の進路に選んだのは名門・嘉悦大学。
田中美咲選手、寺井有美選手は後輩にあたる。
入学二年目の2年生当時、早くも全日本からお声が掛かる。その年のアジアカップにも出場。翌年ユニバーシアードにも出場。充実した活動を行う。
そんな奥村選手が新たな活動拠点と定めたのはJTマーヴェラス。ここで中村選手と再会する。

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当時のJTは転換期を迎えていた。
充実期を迎えていた奥村選手はユニバーシアード代表として出場。ユニバのメンバーで出場したエリツィンカップではベストブロッカーに輝き、更にVサマーリーグでも敢闘賞を受賞。
そして、迎えたVプレミアリーグ2013/14シーズンでは新人王とブロック賞を受賞。
しかし、この年チームは7位と低迷。チャレンジマッチに出場するも上尾メディックスに敗れチャレンジリーグ降格の憂き目に遭う。

このことが奥村選手を全日本から遠ざけ、以後の2シーズンは、文字通りJT復活への歩みとなる。

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チャレンジリーグでは格が違うJT。
2014/15シーズンは17勝1敗の好成績でリーグ優勝。奥村選手もスパイク賞、ブロック賞、そしてMVPの三冠を獲得。いよいよの機運が高まる。

しかし、迎えたトヨタ車体クインシーズとのチャレンジマッチでは初戦を3-2で破るも、第二戦1-3で敗れ、プレミア復帰はお預けとなる。

JTはこの無念を返す刀で黒鷲旗大会でぶつけた。

連日フルセット、怒涛の反撃でプレミア勢を蹴散らし、決勝の相手は因縁のトヨタ車体。これをストレートで破り、チャレンジリーグ葉津の同大会を優勝。

来年こそのJTに、あるテコ入れ人事かあった。
吉原知子監督の就任である。

JTに闘争心を植え付けるべくやってきた闘将の指導の下、ハードトレーニングを積み、JTは更にパワーアップ。
何と2015/16シーズンは21戦全勝優勝の快挙を成し遂げると、迎えたチャレンジマッチでは因縁の上尾メディックス。マーフィー、荒木選手を擁する強力ラインナップをも物ともせず、二戦連続のストレートで撃破。
かくして2シーズンぶりのVプレミア復帰を果たすと、続く黒鷲旗大会を連覇。

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まさに飛ぶ鳥を落とす勢いにあった。

奥村選手はこの活躍が認められ、2016年全日本に復帰。再び充実期を迎えていく。

そして迎えた2016/17シーズン。
JTが躍動する。
開幕戦のトヨタ車体との一戦をストレートで撃破すると早くも優勝戦線に加わる。

しかし日進月歩のVプレミアリーグ。
弱点を研究される。
エース・オヌマー選手をアタックで狙われ、弱点のサーブレシーブで攻め立てられる。
JT得意のコンビバレーも、前に落とすサーブで奥村選手のブロードや速攻を封じる。
中盤でJTは低迷。5位まで後退した。

ここでJTは弱点を克服するためにリベロ井上選手をレシーバー兼ピンチサーバーに配置換え。田中瑞稀選手のサーブレシーブの成長もあり、年明けには再び首位戦線に加わる。
史上稀に見る僅差の末4位でレギュラーラウンドを通過したJTだったがエース・オヌマー選手が体調不良。橘井選手が抜擢され奮闘するもJTのファイナル3進出は絶たれた。

それでも、最後まで果敢に闘い抜くJT。
最終戦となった日立との一戦はフルセットの激戦となりJTが意地でこの試合を勝利。
涙のシーズンは終わった。

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そして、奥村選手は全日本へと駒を進める。
彼女もまた、全日本ではまだ国内デビューがまだ、これから。

ミドルブロッカー再編元年とされる今季、やはり求められるのは機動力。
高さのある岩坂選手。
最高到達点317cmを誇る最長身の松本選手。
そして、リオデジャネイロオリンピック出場経験を持つ、ブロードがトレードマークの島村選手。

そして、奥村選手の4名がこのワールドグランプリで凌ぎを削る。

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JTの切り込み隊長が、いざ、世界に挑む。
これから、置き忘れたものを取り戻すための闘い。

いよいよ、これから始まろうとしている。